虎 と 私
私は思う。
虎は強く、自由で、恐れるものなど何もないのではないかと。
しかし、虎には虎の恐怖がある。
想いがある。
思慮がある。
苦悩がある。
それは、私の想像をはるかに超えて広く深い。
そして、虎の野生と理知は、相反する様でいて、そうではない。
虎が山河を駆け月に吼えることと、洞穴竹林に伏し千万の思索を巡らせることは、相互に補完し合い、虎というひとつの生き物を成す。
いや、むしろ両者を備えるものこそが虎なのかもしれない。
小説「山月記」の李徴は、臆病な自尊心と、尊大な羞恥心ゆえに虎と化した。
しかし、私の知る虎は違う。
尽きぬ想いと絶えぬ思索、そして、そう在り続ける姿において虎なのだ。
そして、それはこれからも変わらないであろうと思う。
とても興味深い。